心血管イベントの既往がない成人にもスタチンは有用かもしれない。

論文紹介

スタチンは脂質異常症の治療薬としてだけでなく、心血管イベントの二次予防薬として存在感のあるお薬です。

二次予防の高い効果から、心血管イベントの既往がない一次予防に対して様々な研究と報告がされており、
これらをまとめたシステマティックレビューが今回の論文(文献1)です。



■ 試験デザイン

DATA SOURCES:
Ovid MEDLINE (from 1946), Cochrane Central Register of Controlled Trials (from 1991), and Cochrane Database of Systematic Reviews (from 2005) to June 2016.
STUDY SELECTION:
Randomized clinical trials of statins vs placebo, fixed-dose vs titrated statins, and higher- vs lower-intensity statins in adults without prior cardiovascular events.
DATA EXTRACTION AND SYNTHESIS:
One investigator abstracted data, a second checked data for accuracy, and 2 investigators independently assessed study quality using predefined criteria. Data were pooled using random-effects meta-analysis.
MAIN OUTCOMES AND MEASURES:
All-cause mortality, CVD-related morbidity or mortality, and harms.

非常に分かりやすい記載で助かりますね。JAMAさんが非英語圏も読者対象にしていることが伝わってきます。
さて今回も論文をTPECOに分けると以下のようになります。

TPECOに分けると下記のようになります
T RCTのシステマティックレビュー
P 心血管イベント既往のない成人
E&C
 スタチン vs プラセボ
 スタチン 固定用量 vs 用量調節
 スタチン 高用量  vs 低用量
 
O 総死亡、心血管イベント(発症と死亡)、有害事象



■ 結果

Statin therapy was associated with decreased risk of all-cause mortality (risk ratio [RR], 0.86 [95% CI, 0.80 to 0.93]; I2 = 0%; absolute risk difference [ARD], -0.40% [95% CI, -0.64% to -0.17%])

composite cardiovascular outcomes (RR, 0.70 [95% CI, 0.63 to 0.78]; I2 = 36%; ARD, -1.39% [95% CI, -1.79 to -0.99%])

総死亡に対しての効果はRR 0.86であるものの、ARDは-0.40%にとどまる。
もともとの死亡率そのものが低いこともあり、実際の死亡率減少が低くなってしまうということでしょう。
Abstractには試験期間の中央値が記載されておらず、この効果が得られる内服期間が不明でした。

効果はあっても、その病気になる人が少ないと効果は乏しくなる。
しかし、人間に死亡率は100%だし、日本人の約25%が心筋梗塞か脳卒中(それぞれ15.5%, 9.0%)であるわけ(文献2)だから、
このような研究の場合は観察期間などに注意を払って読んでいるのですが、見つけれれなかったです。



■ 副作用

Statins were not associated with increased risk of serious adverse events (RR, 0.99 [95% CI, 0.94 to 1.04]), myalgias (RR, 0.96 [95% CI, 0.79 to 1.16]), or liver-related harms (RR, 1.10 [95% CI, 0.90 to 1.35]).



重篤な副作用は有意差がでないぐらい少ないですね。筋肉痛に関しては、有名な副作用であるため有意差なしという結果は少し意外でした。

このような結果よりUS Preventive Services Task Force (USPSTF)は以下のように声明をだしています(文献3)

CVDリスク因子
(脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙)が1つ以上
低〜中用量スタチンの使用を開始 B勧告
10年間のCVDイベントリスクは10%以上 低〜中用量スタチンの使用を開始 B勧告
10年間のCVDイベントリスクは7.5%〜10%以上 低〜中用量スタチンの使用を開始 C勧告

なお、76歳以上の成人におけるスタチン使用の開始と利益のバランスを評価するには不十分であると評価しています

日本人におけるリスク評価は新潟大学のJJリスクエンジンが参考になりそうですね。
 1 予測する時点を10年に変更
 2 冠動脈心疾患と脳卒中を足す
 3 100倍する (%に変更)



■ 参照文献
文献1 Chou R et al., JAMA. 2016 Nov 15;316(19):2008-2024. PMID: 27838722
文献2 厚生労働省 平成 26 年人口動態統計月報年計(概数)の概況 p10 図5
文献3 US Preventive Services Task Force et al., JAMA. 2016 Nov 15;316(19):1997-2007. PMID: 27838723