RAS系阻害薬開始後にCrが増加する患者はリスクが高い。

糖尿病患者さまが高血圧になった場合には、RAS系阻害薬を使用することが推奨されております。またRAS系阻害薬は輸出細動脈を拡張することから、eGFRは低下するものの腎への圧が低下するため長期的には腎臓を保護するといった内容の講演会もあったと記憶しています。

そんな中でこの論文を見つけたので読んでいました。


■ 試験デザイン
TPECOに分けると下記のようになります
T  コホート研究
P   RAS系阻害薬(ACE阻害薬およびARB薬)を開始した患者
E&C 30%以上のクレアチニン増加 and 10%毎のクレアチニン増加
O  末期腎疾患、心筋梗塞、心不全および死亡率

■ 結果

Creatinine increases of 30% or more were associated with an increased adjusted incidence rate ratio for all outcomes, compared with increases of less than 30%: 3.43 (95% confidence interval 2.40 to 4.91) for end stage renal disease, 1.46 (1.16 to 1.84) for myocardial infarction, 1.37 (1.14 to 1.65) for heart failure, and 1.84 (1.65 to 2.05) for death. The detailed categorisation of increases in creatinine concentrations (<10%, 10-19%, 20-29%, 30-39%, and ≥40%) showed a graduated relation for all outcomes (all P values for trends <0.001).




30%以上のCr増加がイベントと関連するばかりでなく、10%以上のCr増加から用量に合わせて段階的なイベント増加の関係を示しています。
本文中より糖尿病患者は23.8%(Cr≧30%), 22.0%(Cr<30%)でした。

また糖尿病患者 vs 非糖尿病患者をみると、30%以上のCr増加はいずれもイベントと関連してます。
末期腎疾患 3.19 (1.81 to 5.61) vs 3.09 (1.91 to 5.01)
心筋梗塞  1.82 (1.28 to 2.60) vs 1.31 (0.97 to 1.78)
心不全   1.32 (0.95 to 1.85) vs 1.40 (1.13 to 1.73)
死亡率   1.96 (1.66 to 2.32) vs 1.78 (1.55 to 2.04)

注意しなければいけないのは、RAS系阻害薬がイベントの原因となっているのか、
Crが増大しやすい症例ではイベントが増えやすいためかは判断できない点です。

そのためCrの増悪でRAS系阻害薬を中断すべきか、継続すべきかはこの論文からは判断できませんが、
自分なら30%以上増加すると少し悩んでしまいますね。引き続き調べながら慎重に判断していきたいと思います。


■ 参照文献
Schmidt M et al., BMJ. 2017 Mar 9;356:j791. PMID: 28279964